それはある日の朝の事。
目を覚まし、いつものように朝ごはんを食べ、コーヒーを飲んで顔を洗って、着替えて、化粧をして、鏡を見て、思った。前髪を切ろう。
いつも使っている髪切りハサミはこないだ芝生を切るのに使ってだめになってしまった。ああ、そうだ。ダイソーで買ったミニハサミがあるではないか。以外にあれ紙やったらサクサク切れたなあ。髪、いけるな。
そう確信した私は、100円のはさみを手に取り、前髪へと右手を運んだ。そう、コンタクトを付け忘れている事にも気づかずに―――。

視界がぼやけているのは常日頃だった。だから違和感もそんなになかった。なんせ鏡は至近距離だった。そして立花は寝起き30分だった。こんな最悪なタイミングで「前髪をきったらどうだろうか、」そう、私の脳内にささやきかけた前髪の神様よ、どうしてくれよう。

あれ、あれ、なんかおかしい、もうちょっと切ったらいいのかな、あれ、なんか、あれ。立花の体中の細胞は叫んでいた。切りすぎではないのかああああああああああ
しかし目に見えるものだけを信じて生きてきた立花の右手が信じるものは裸眼。もうちょっとじゃね、もうちょっとだよな、うん。そう切り進めていったのである。よし、いいかな、うん。と顔についた前髪達の残骸を払っているときに気づいた。あれ、私コンタクトしてなくね。そしてようやっと事の重大さに気づいたのである。
すちゃ、とコンタクトをつけた私の世界に広がったのは、サランラップのCMに出てくる女の子だった。ああそうか私は夢をまだ見ているのだな、うん。と思ったが、首筋にあたったヘアーアイロンの熱さで夢ではないことに気づいた。 あああああああああ悲しみよ悲しみである。
いや、これは私のせいではない。わたしは何もやっていないのだ。悪いのはコンタクトでもない。そう。きっと、安物のはさみのせいなのだ―――――。

などと供述しており、現在、取り調べにて「違うの、これは新しいおしゃれなの、そうよ、」と精神の攪乱が見られるとの事。そのため、次回、出会ったときは危険であるため、前髪のことには触れないよう、警察は注意を呼びかけているとの事です。
以上、現場からお伝えいたしました。


ワンマンライブ遊びにきてね。

6.21 sun
小麦粉と卵と牛乳と私。vol.3

学芸大学メイプルハウス
OP:18:30- ST:19:00-
¥2,000₍+1dr₎
o.a.高倉周作