秋子は白衣にしわとりのスプレーを掛けながら、窓の外を見た。
季節はもう冬。スライムの研究を初め、今年でついに4年目。何かを続けるということは本当に難しい事だということはつくづくわかっていながらもやめられないのは、もはや好きということよりプライドと意地の方が勝っているかもしれないそれでも、それでも、やめられないのだ。

秋子は、昼間に研究室でスライムの研究をし、夜にはバイトに行くという生活をしていた。
バイトはきのこを育てるバイトだ。暗い建物の中、朝と夜の区別もつかない。きのこを育てるバイトは、秋子にとっては余計な事を考えなくていい、家よりも落ち着ける時間だった。無心になってきのこの菌を木にくっつけてゆく。このきのこがブランドものだろうが、何十万円するものだろうが、そんなことはどうだってよかった。バイトは深夜2時まで入れた。終わってキックボードで家に帰り、まかないでもらったきのこ弁当で腹を満たし、なんとなくつけたテレビをみて、孤独を埋める。どこぞの料理家の人が次々と差し替えられていくフライパンをもろともせず、淡々と料理を進めていく。材料は最初から決められていて、それをただ右手左手と投げこめば、完成だ。そう、この世の中「過程」などきっとどうでもよいのだ。ゴールに辿りつければ。終わりよければすべてよし。なんでもよし。秋子はテレビの電源を落とし、ベッドに入った。



「秋子さんはどうして、スライムの研究をしているんですか?」
そう聞いてきたのは、同僚高橋。
自分も同じじゃないか、と少し腹を立てつつも「未来のためよ、」と答えた。
ここスライム研究室は、これからの世界、個体ではなく液体の時代なのだと考え、
ロボットや建物、車までもをスライム化することができないかという研究を行っている。
しかし秋子の本当の理由は違った。
秋子の両親は、秋子が高校3年生の頃、突然失踪してしまったのだ。なんで、どうして、絶望に打ちひしがれる中、玄関に落とされた1滴の青色のスライムを見つけ、両親を探すためにここ、スライム研究室へ入った。しかし、あれから4年という月日が経つ今なお、手がかりはゼロだ。
 今日もまた、きのこバイトだ。そろそろ研究室を切り上げよう、そう腰を上げた時だった。
突然、目の前の実験中のスライムが光りだしたのだ。
「室長!スライムが反応を起こしています!これは今までにない反応です!」
「なんだと!すぐに凍らせろ!そのままの状態を維持するのだ!」
秋子は驚きながらもすぐに冷却スプレーをかけた。光ったままのスライムはかちんこちんになった。そして秋子は自分の腕をみてさらに驚いた。バイトの時間まであと3分じゃないか!!!!!秋子はスライムを室長に投げ、キックボードを思い切り蹴りながらバイトへと向かった。
今日もまた、同じような1日の始まりだ。

続